■私は貯金箱

昨日の朝は徹夜2日目だったので睡魔も極限にきていて、
あと少しでフィニッシュのとこまで来ていたので、
少しだけ仮眠をとってから仕上げに入ることにした。
締め切りは朝の10時くらい。時計を見るとただいま午前0時すぎ。
・・・2、3時間寝ても大丈夫だろ・・。
毛布をかぶって横になったらすっと意識が薄れていった。




・・・・・・・・・・夢の中で私は真っ白くだだっ広く無機質で病院みたいな部屋にいた。
自分の頭はスキンヘッドで、その頭に小さく細長い穴のあいた箱を埋め込まれていた。
私はその頭がかゆいのかポリポリとしきりに掻いている。


周りには私と同じ姿をした男女が数人たたずんでいる。
その中の2人の男が激しい口論をしている。
白い部屋の遙か彼方地平線からお医者さんみたいな白衣のインテリっぽいお兄さんが歩いてきた。
相当距離があるのか、ものすごく長い時間かけて歩いてくると私の前で立ち止まりお兄さんは言った。

「ご機嫌はいかがですか?」
「はぁ・・“いかが”って言われても・・・。」
「ここの生活には慣れましたか?」
「テレビ・・ないんですか?」
「そんなのキミには必要ないでしょう?」
「退屈でしょうがないですよ。・・・それにここ、ものすごく広いのに息が詰まりそうで・・」
「そう思ってまたお友達を連れてきたんだよ。明日紹介するからね」
「今度はまともな人でしょうね・・?
こないだの人なんか、ホジった自分の鼻クソ食べてましたよ・・・。その手でボクの服に触るんです」
「絵を描くのが好きな子だから、きっとたけしくんともうまくやれるよ」
「そうですか・・。別によっぽどじゃなきゃ好き嫌いないですけど・・」

隣の2人の男たちの口論がエスカレートしていく。
「うるさいなぁ・・・」
私はチラと2人の方をのぞいてからボソッとつぶやいた。


「うん、キミはよくがんばってるよ。だから褒美をあげたんじゃないか」
「はい、・・・でもなんだかまだ不安なんです」
「なにがかね?」
「ボクってホントにここにいるんですかね?」
「現に私の前に立ってるじゃないか」
「なんだか夜寝て目を覚ますと、そこに違う自分がいるような気がして・・」
「疲れてるんだよ、たけしくん」

「・・・ボクって幸せですか?」
「うん、幸せさ」
「ホントですか?」
「そうとも」
「先生は幸せですか?」
「幸せさ」
「どのくらい幸せですか?」
「きみが思うよりずっと幸せさ」
「ホントですか?」
「そうとも」
「いいなぁ・・ボクも先生みたいになるぞ」
「なれるとも。キミが思うならきっとそうなれるんだよ」
「先生は強いですね」
「キミも強いんだよ」
「ホントですか?」
「そうとも」
「どのくらい強いと思いますか?」
「うんと強いさ」
「壊れないですかね?」
「壊れないさ」
「ホントですか?」
「そうとも。信用したまえ」
「先生がいればボクは大丈夫だ」


微笑みかける先生の横から、口論していた2人の男が飛び出してきた。
口論がエスカレートしてついに取っ組み合いになったのだ。
揉み合った2人の男はつかみ合ったまま私の体に勢いよく飛んできた。

私ははずみで床に吹っ飛ばされた。
固くて白い清潔な床に私の頭が叩きつけられる。
私の頭は粉々に砕けた。
私の頭はどうやら陶器で出来ていたらしい。
砕け散った陶器のかけらと共に頭の中に入っていた小銭がぶちまけられた。

私の頭は貯金箱だったのだ。中の小銭は全部1円と5円だった。
しかもレシートやガムの包み紙なんかもけっこう混じっている。
私はことのほか少なかった自分の頭の中身に絶望しつつ、壊れた頭に手をやり先生のほうを見た。


「先生・・直せますよね・・・?」

先生は肩をすくめた。
「・・・・どうだろう。・・・先生もがっかりしたよ」



地平線まで部屋の端が見えない。
まるで白いもやのようだ。
頭の中から音が鳴り響いてくる。

ボコン、ボコン。

“なんの音だ??”
私は目を覚ました。
時計を見るとまだ1時だった。
1時間でも夢を見るんだな・・。

ボコン、ボコン ・・・。

まだあの音が鳴り響いている。なんの音だろ・・??
コーヒーを飲もうと台所に行くと隣の風呂場から音が聞こえてくる。

ボコン、ボコン。

風呂場の戸を開ける。
とたんに中から強烈な熱気が私の顔を襲う。

「うわっっ!!」
バックドラフトだ(違


・・・・またやってしまった・・。
見ると寝る前に沸かしていたお湯が沸騰してマグマのようになっていた。

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