12話【回転花火・中編〜別れ】

いちおうルシィがストーリー上では退場するエピソード。
過去に姉を守ることができず、今また大事な者を守れない自分の無力さを味わうことになるジョン。
後の彼の行動を変えるエピソードとなっています。
暗いダウナーなエピソードなため、最後までどうしようかと躊躇しておりました。
一番下のコマの花火の中のジョンとルシィの図はイメージ的に、
ブライアン・デ・パルマの「ミッドナイト・クロス」からパクっています。

マーゴとの再会

マーゴとの再会

ルシィの故郷チリエル星に戻ってきたルシィとジョン。
ちょうど街の祭が催されている。ルシィは昔なじみの友人と再会する。
その中には無二の親友マーゴがいる。

「マーゴ、なんかあなた太ったんじゃない?」

ルシィ

久しぶりの旧友との再会にルシィの元気も戻ってきたようだ。

首狩り・空港

空港・首狩り達

「ちゃんと用意したか。」
「はい。」と手下はボウガンを見せる。
「よし。ここじゃ銃がすぐ使えなくなるからな。」
「まったく、何てほこりっぽいところだよ。早いとこ片づけて帰ろうや。」
顔にたかる虫と、物売りの少年にうんざりしながら空港を後にする4人。

「スゴ腕なんだろう。楽しませてくれよなぁ。」つぶやく首狩り。

ズッカ

ズッカ

「さいですか。地球から? お似合いのカップルですなぁ。
ああ、そうそう。このチケットね、あっちのアトラクションで使ってやってくだせぇ。
最近ここの祭も派手になってきてねぇ。なかなか賑わってますよ。
夜の花火はね、いい場所があるんでさ。後で案内しますよ。」
と2人にチケットを渡す、妙に馴れ馴れしいが親切な小男ズッカ。

「楽しんでらっしゃいまし。」

祭のジョンとルシィ

祭のジョンとルシィ

いやがるジョンの手を引いてダンスに誘う。
「だめだって!!」
「なんで」
「お・・踊れないんだ」
「いいよ。教えたげる。いらっしゃい。」
恥ずかしさで死にそうなジョンをルシィがエスコートする。

「オレ・・・オレこんな恥ずかしいの初めて!」
「いいでしょ? こんな緊張もたまには。フフフ」

サミュエル

サミュエル

才能豊かなベーシストで控え目ながら、秘かに反骨心あふれる詩人。
空気の読めないバンドのメンバーの意見をさえぎって、客のノレる音へ勝手に変調させてしまう。
旧友ルシィと夫ジョンのためにメロウな曲をプレゼントしてくれる。

射的場にて

射的場にて

射的でジョンが獲った賞品を選ぶルシィ。
店主の左にいる動物はルシィの家で飼っているルークと同じ動物のぬいぐるみ。
ちなみにルシィが選んだのはチューバッカ。

花火

夜の花火・ジョンとルシィ

肩を並べて花火を眺める2人。
脇には、昼ジョンに射的で獲ってもらった賞品のぬいぐるみが。
「一番最後に特別な花火が上がるの。その時に願い事をするときっと叶うって。」
「へぇ。楽しみだな。何願い事するんだ?」
「へへへ。内緒。」
とニッコリ笑いながら赤ん坊の入ったお腹をさする。

「ジョニーは?」

拉致

拉致されるルシィ

出店に買い物に一人出かけたルシィは首狩りの手下に捕まる。
ルシィの友人の男が助けようとするが、後で現れた首狩りに殺されてしまう。

首狩りとルシィ

首狩りとルシィ

拉致されたルシィの服をナイフではぎ取りながら首狩りが言う。

「おまえは天使みたいな女だな。それにいい体してるな。
 いつも女は手下の餌にするんだが、おまえは惜しいな。
 ヤツらにくれてやるのは惜しい。どうだ、オレと一緒に来ねぇか?」

首狩りはどうやらルシィに興味があるらしく、
仕事を忘れて世間話なんか始めるが、当然ルシィが聞くはずもない。
ひとしきりしゃべった後、
やはりいつものニヤニヤ顔に戻った首狩りは言う。

「ところで−」
「人間の体の血が全部流れ出るまでどのくらいかかるか知ってるか?」
そばを飛んでいた蝿をすばやく片手で捕らえた首狩りは、
蝿の羽根をむしりながら言う。
「どのくらいの愛があるか試しちゃおうか。愛の力ってやつをネ。」

「−ああ、そうだ。オレは天使は大っ嫌いなんだ。」

郊外の船着場

郊外の船着場

ジョンとルシィを首狩りに売ったズッカ。
ズッカにルシィを囮にされ、首狩りのナイフさばきと手下の矢に
手も足も出ず丸腰のジョンは捕まり、
人里離れた海のそばの廃家の柱に縛り付けれ、
首狩りの一味からリンチを受ける。
体の数カ所にボウガンの矢が刺さっている。
側にはルシィが裸で体の数カ所から血を流しながら倒れている。
ジョンはズッカを睨み叫ぶ。
「おまえは最後に殺してやる」
「笑わせるな。今のおまえに何ができる。」と首狩り。

「悪いね。ここを出る金が欲しかったんでさ。
 まあ、がんばって元気でやっとくれよ。生きてたらね、ハハハ。」

金を首狩りから受け取ったズッカはそそくさとその場を去る。

瀕死のルシィ

瀕死のルシィ

「さて、問題で〜す。この体中から血を流す女は
 あと何分生きられるでしょうか。」

血まみれの裸で横たわるルシィ。息はあるがかなり弱々しい。

「生きてるよ。出血多量だけどネ。
 じゃあ、チャンスやっちゃおう。
 ゲームだ、ゲーム。名付けて「天使を救え」だ。」

首狩りは大量の鍵の入った箱をジョンの方に投げる。

「こいつは保ってあと30分だな。一番近い医者までは20分。
 あとはこの中から早いとこ当たりを引くんだネ。」

そう言うと、首狩り達は身動きできないジョンと
瀕死のルシィを残し立ち去る。

「あ、どっちみちここは水位が上がって水浸しになるからネ。
 じゃあな、生きてたらまた会おうや。
 かわいい天使ちゃん、夢の中でまた会えるヨ。」

ボート

首狩りと手下達・ボート

「あれの中に本当の鍵入ってるんですか?」
「そんなわけないだろ、ありゃ全部オモチャだよ。」
「ヘヘヘ、やっぱりね。」
「どっちみち女はすぐ死ぬ。男は・・抜けてくるだろうネ。
 ヤツの首は後の楽しみだよ。
 これで終わりならヤツの首は価値なしだナ。」

「もうすぐ例の最後の花火っすね。何願い事すんすか?」

「おめえ、花火観て帰るつもりか?」

命の砂時計

命の砂時計

ジョンは鍵には見向きもせず、
拳の関節をはずして手錠を抜ける。
手は血だらけになっている。
フラフラになりながらルシィをかかえて歩くジョン。
ジョンも体中ボロボロなため激痛をこらえて歩くが、
歩は進まない。
歩いてきた道には2人の血の跡が点々としている。

回転花火

回転花火〜願い事を〜

「・・・・ジョン・・・ごめん・・」
花火の鳴り響く中ルシィが息をひきとる。
血と涙と鼻水でぐしゃぐしゃのジョン。
「・・・オレをひとりにしないでくれ・・」
ジョンの背後で最後の花火が鳴り響く。

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